日本酒の酸について
- カテゴリ: 豆知識
- 最終更新日:2018年05月16日(水)13:29
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日本酒に含まれる主な『有機酸』 酸性を示す有機化合物
日本酒に含まれる酸の代表的なものは、乳酸、リンゴ酸、コハク酸、クエン酸。有機化合物のうち、酸性を示すものを有機酸といい、清酒中の酸はほとんどが有機酸成分。
酵母=微生物が糖分を食べる際に、アルコールと炭酸ガスを出すことを利用してお酒が造られます。このアルコール醗酵の過程で、醸造酸と呼ばれる酸を出します。
日本酒における酸の役割
有機酸は、清酒の味に大きく影響する重要な成分です。酸味や旨味をもたらし、揮発酸は香りの構成要素にもなります。有機酸には味を引き締める働きがあります。
清酒中の有機酸の多くは酵母によって作られることから、酸味のコントロールには酵母の使用法が重要となります。
酸度・日本酒度の関係
酸度=有機酸の濃度が高いほど濃醇な味わいに、低ければ淡麗な味わいになります。日本酒度が同じだとすると、酸度が高いとキレ良く、きりっと締りのある辛く感じるお酒に、逆に酸度が低いとどこか丸みのある、甘く感じるお酒になります。辛口/甘口の感じ方については、個人差があります。
日本酒の酸(1): 乳酸
山廃・生もとなど昔ながらの造りの日本酒に多く含まれる酸。ヨーグルトの酸。穏かで角が立っていない印象が特徴的。冷やすとすっぱさが際立ち、温めると酸のやさしさが出てくる場合も。
日本酒の酸(2): りんご酸
りんご酸は、その名の通り、りんご様の酸で、りんごにも含まれています。爽やかな酸味で、やや刺激的な収斂味のある(しまりのある)酸味が特徴。酸味にインパクトをもたせた清酒を造る場合は、リンゴ酸含有量を高くすると好ましい味になるとされています。清酒業界ではこれまでに、リンゴ酸高生産酵母の育種法が数多く開発されています。
日本酒の酸(3): クエン酸
日本酒の酸(4): コハク酸
これら有機酸の多くは、もろみの中で生成されます。清酒中の有機酸の約73%が、醪中で酵母によって生成され、酒母に由来する酸は約17%、残りの約10%は蒸米と麹に由来します。つまり、麹米よりも酒母、酒母よりももろみの中に、これらの有機酸が多く含まれているということになります。
もっとも多いのはコハク酸、次いでリンゴ酸、乳酸、クエン酸、酢酸など。醪中で生成が多いのが、コハク酸、リンゴ酸、乳酸で、酒母では乳酸、酢酸、コハク酸の生成が多くなっています。
ワインも日本酒もたくさんの酸があると飲みづらいので、人間は一工夫をしてこの酸を和らげています。
ワインのように果物から造られるお酒には、醸造酸としてリンゴ酸が大量に誕生しています。やはり多すぎれば飲みにくく、これを解決するためにアルコール発酵のあと、蔵内の温度を上げて乳酸菌の活動をうながし、リンゴ酸をよりおだやかな乳酸と炭酸ガスに分解させ、結果として減酸という効果が得られる「マロラクティック発酵」を行ったりします。
日本酒の場合は、リンゴ酸は大吟醸酒などに少量が出るだけで、酸の多くはワインに少ない乳酸、琥珀酸などです。江戸や明治の時代の純米酒は、この酸がたくさん出過ぎていて、「鬼ころし」と悪口を言われていましたが、今では、さまざまな醸造技術が進化し、酸をあまり出さない工夫が生み出されています。
参考 : お酒の話|神田和泉屋
清酒を火入れするとコハク酸とリンゴ酸が減少し、乳酸が増加する。腐造酒では酢酸、乳酸が増加し、リンゴ酸、クエン酸の減少がみられる。
補酸用として認められているのは乳酸、コハク酸、リンゴ酸で、副原料として認められているのは乳酸、コハク酸、クエン酸、リンゴ酸である。
清酒中の酸を分別定量することはなかなか困難であるため、一般には清酒を直接アルカリで中和して酸度を測定している。指示薬はブロモチモール・ブルー(BTB)とニュートラル・レッド(NR)の混合指示薬を用い、清酒10mℓを中和するのに要する0.1N-NaOHのmℓ数をもって清酒の酸度としている。
平均的な清酒の酸度は1.0~2.0 であり、1.0より低いと低酸味酒、2.0より高いと高酸味酒と言えるだろう。なお、国税庁の市販酒調査(2012年度)によれば、酸度の一般酒、吟醸酒、純米酒の平均は、それぞれ1.18、1.32、1.50である。
参考 : 酸度・総酸・有機酸|灘酒研究会